ディスプレイ・装飾、POPなど販売促進を制作するときのヒント

日本人独特の美意識「粋-いき」について

NHKの番組『100分de日本人論』を観て

NHKで放送された『100分de日本人論』という番組を観ました。

尊敬している方からの紹介で「面白いから是非観てみて!」と言われ、『再放送』を録画して観たのですが、いやホントに「良かった」です!

メチャクチャ面白かった。

もともとの番組は、名著を紹介し読み解いて解説する「100分de名著」という番組のお正月特集編で、「日本人論」というテーマに、論客4名(編集 工学研究所長 松岡正剛氏 / 芥川賞作家 赤坂真理氏 / 精神科医 斎藤 環氏 / 人類学者 中沢新一氏)によって、各々が得意とする分野の名著を 紹介し、多角的に名著を読み解き、「日本人」について考察するという内容。

番組の中で、松岡正剛さんが『日本人の美学』というテーマで『心の交情 揺れ動く姿』や『失って、初めて解る「本質」の美意識』がよく表わされているという、『九鬼周造著:「いき」の構造』を推薦、紹介。

これが特に興味深かった。

「いきな○○」という日本人的美学は、自分の仕事である「ディスプレイ・装飾」や「デザイン制作」「プランニング」などのクリエイティブで、すごく「通じるものがあるなぁ」と思いをめぐらしながら観ていました。

 

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では、「いき」という美意識とは、「いき」の構造とはいったい何でしょう?

「いき」について、番組を観ての概略をご紹介します。

まず、「いき」について〜ウィキペディアから

“いき”または“意気”とは、江戸における美意識(観念)のひとつであった。江戸時代後期に、江戸深川芸者辰巳芸者)についていったのがはじまりとされる。身なりや振る舞いが洗練されていて、かっこうよいと感じられること。また、人に通じていること、遊び方を知っていることなどの意味も含む。カタカナでイキと記すこともある

「いき」は、単純美への志向であり、「庶民の生活」から生まれてきた美意識である。また、「いき」は親しみやすく明快で、意味は拡大されているが、現在の日常生活でも広く使われる言葉である。

反対語は「野暮」(やぼ)または「無粋」である。(wikipediaより)

 

ちなみに、「粋」という漢字は、

漢字の「粋」は「すい」と読み、「いき」と使用するのは誤用、誤読である。

と記されています。

著者は「いき」な意識を構成する三要素として、媚態」「意気地」「諦め」をあげ、その意味を順に説明しています。

 

 

「いき」を構成する三要素「媚態」「意気地」「諦め」とは

①「媚態(びたい)」

現代でいうところの、色気

性的・身体的魅力、異性に対するセクシーで上品な振る舞い、行動。

恋愛において、男女が互いに「相手を惹きつけようとする駆け引き」に発する美意識、色気こそが「いき」の大前提としている。

「相手を惹きつけようとする駆け引き」は、異性との間に「どう転ぶかわからない」ような不安定な関係をもちこむことであり、不安定な関係から生まれる「緊張」を表現したものが、「なまめかしさ」「つやっぽさ」「色気」という振る舞いにつながるとしています。

 

媚態のツボは、「つかず、離れず」という微妙な距離感、緊張感。

媚態とは、ギリギリまで相手に接近しつつ、距離の差が極限に達することであり、近づき過ぎたり、ひとつになってしったり、相手を得てしまうと「媚態」は消える。

つまり、男女の関係がいざ「深い仲」になってしまうと「媚態」は消え去り、「いき」ではなくなってしまう。

この先、「どう転ぶかわからない」「成り行きがわからない」ことこそが「媚態」の特性であり、未知の不安定さを保つことが重要なんですね。

 

 

②「意気(いき)」

『媚態』の「微妙な距離感」を保つのに必要なものが、『意地』、『意気地(いきじ)』(現代の「いくじ」)。

「武士は食わねど高楊枝」という武士道の理想や、「宵越しの銭は持たぬ」江戸っ子の気質や気概、しっかりとした信念をもった「自分への誇り(プライド)」のこと。

「いき」には江戸っ子らしい「張り切り」や「勇ましさ」、「恰好いい」「威勢がいい」「荒っぽい」などの気品や品格がなければならない、ということです。

相手の気をひこうとする『媚態』を持ちながらも、異性に対して突き放してみせる「誇り(プライド)」。

つまり、信念から生まれた『意気地』によって、距離感を保つことで、高い精神性となり、「いき」という美意識に繋がる、というもの。

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③「諦め(あきらめ)」

「いき」の第三の要素は、「未練」はさっぱり、きっぱり『諦める』。

未練を絶つということ。

『運命』というものを心得て、「執着心」を捨て、無関心に徹する心のありかた。

様々な境遇や試練を乗り越えることによって「執着心」を絶ち、すっきりと垢抜けした心、未練を絶ち切ったスマートな心に達することが求められる。

つまり、かろやかな諦めと凛としたさわやかな心持ち、「あっさり」、「すっきり」、「スマート」な心持ち、でなければ「いき」ではない。

 

『「いき」の構造』のまとめ~『媚態』『意気地』『諦め』の三位一体

著書で「いき」の構造は、「媚態」「意気地」「諦め」の三要素から成り立っていることがわかりました。

簡略していうと「いき」とは、「色気」を持ちつつ、「気高く」、「さっぱり」している、心持ちでいること。

簡単に言うと、こんな感じでしょうか。

 

皆さんも、普段「いき」な○○って、こんな感じで使ってませんか?

ボクは番組を観ていて、妙に納得してしまいました。

 

 

お店や施設、売り場のディスプレイ・店舗装飾って「いき」に近いクリエイティブ!

「いき」とは、「色気」があって、「気高く」、「さっぱり」している様。

いままで、曖昧でなんとなく表現していたことが、歴史的、民族的観点から分析されると、「なるほどぉ」と思ってしまいます。

 

「いき」という日本人独特の美学は、ビジネスや商売、デザイン制作などあらゆるクリエイティブに通用すると思うんです。

「おぉ?いきなお店だね〜」とか、「イキなことをする会社だ!」とか。

 

とくにお店や施設、売り場のディスプレイ・店舗装飾って「いき」のあるクリエイティブだと思います。

「デザイン」だから、もちろん「色気」は大事。

加えて「強い信念」=「クライアントの世界観や売りたい商品を消費者に訴える信念」があって、

「すっきり」=「目的(テーマや販促等)を達成するために、なるべく余計なものは省く」、

「スマート」=「主役はあくまで「商品」であり、デザインやモチーフは脇役に徹する」。

まさに、ディスプレイ・店舗装飾です。※もちろん様々なクリエイティブに当てはめられますが…

 

「いき」的美意識を、ディスプレイ・装飾に当てはめると、

○速効性重視の販促物と違い、「直接的」な表現は避け、お店の「想い」や「世界観」を活かし、お客様に気遣った演出をする、遅効性の販促物である。「販売」目的で、お客様にズカズカ近づき過ぎず、絶妙な距離感でブランディングする。

○お店の目的やコンセプト、テーマなどを「しっかりとした信念」で視覚的に表現する。

○メインはあくまでも「商品」だから、ディスプレイや装飾は「商品」より「目立つ」ことはしない。

欲張って、何でもかんでも表現に入れ込んだりしないこと、「あっさり」「すっきり」「スマート」なディスプレイ・装飾がちょうどよい。

 

↓この番組を観て、即買いしました。難しいけど「ため」になります。

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デザイナーやデザインに関わる仕事や「モノづくり」などのクリエイティブな仕事をしている人には「いき」という言葉は刺激的です。

ハッキリ言ってデザイナーさんは皆、「いき」に思われたい、と思って常に仕事しています。

その「いき」という美意識について、根本というか基本を教わった気がします。

 

「色気」があって、「気高く」、「さっぱり」している。

日本人の美意識によって、人々に共感される「いき」なデザインをつくりたいものです。

 

そんな「いき」なデザインやクリエイティブで、依頼された皆さんが「いき」なビジネスや店舗運営ができるよう、今後もお手伝いさせていただきます。

 

 

※「ディスプレイ」について【詳しく解説】

店舗を飾り付ける・商品を飾る~ ディスプレイ(display)とは

 

 

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野村 健(Takeshi Nomura)

有限会社次元クリエイト 代表: お店や施設、売り場のディスプレイ・店舗装飾、季節の飾り付け、POP(ポップ広告)制作を中心に、《集客》のための販売促進ツールのデザイン企画・制作、装飾品・インテリア・販促品の販売を行っています。 目指すことは、単なる「飾り」や「デザイン」ではなく、《共感性+意外性=面白い!》をテーマに、購買時点で消費者に「伝わる」《情報発信ツール》として、実店舗のディスプレイ・店舗装飾・季節装飾等の販促物制作を提供したい、と考えています。〜加盟団体:福岡県中小企業家同友会会員