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お店や施設、売り場で「おもてなし」「お店の心」を演出し表現する店舗装飾・ディスプレイ、飾り付け
「おもてなし」と言えば、一般的に訪れたお客様に料理やお酒を振る舞って接待する、というような情景を思い浮かべる方が多いと思います。
「おもてなし」とは、お客様に対して心のこもった待遇や歓待、サービスをすること。
接客や歓待、サービスも大切な「おもてなし」の行動ですけど、店舗装飾・ディスプレイ、飾り付けは、お店や施設、売り場などにおけるお客様への「心のこもったおもてなし」のひとつだと思います。
「おもてなし」と店舗装飾・ディスプレイ、飾り付けについて気づいたことを書きます。
「良い介護施設の選び方」に驚きの発見。
先日、テレビの報道番組内で「良い介護施設の選び方」という内容の特集がありました。
何気なく見ていて、介護施設を選ぶ際のチェックすべきポイントを指南する場面で「なるほど!」と、思わず膝を打った。
介護施設に詳しい専門家が何よりも一番に指摘したことは、ベランダや廊下の手すりの高さ、掃除の行き届き具合などが来るだろうという予想に反して、
『施設内に“季節に合わせた飾り付け”がなされているかどうか』
だったんです。
専門家の分析は、とても説得力のあるものでした。
「まずこの施設は、正面玄関を入ってすぐに、雛人形が飾ってありますね。こういう飾り付けは、あってもなくても介護の内容には関係なさそうに見えます。
しかし、このような省ける手間こそ省かずに、丁寧な仕事をしているところに“入居者のことを第一に考える姿勢”が表れるんです」
ああ、なるほど~。そういうことか!
お店や施設・売り場の店舗装飾・商品ディスプレイにも、同じ事が言えるのではないでしょうか。
お客様は、「雛人形を買いたいから、雛人形をディスプレイしたお店に入る」のではなく、心惹かれる良い雰囲気を感じて、何となくお店に入ることも多いはずです。
たとえば、季節の花が活けてある。
掃除が行き届いていて、ガラスが輝いている。
その日一番のお得な品が、通りからよく見える位置に積まれている。
そこに託されているのは、お客様を「おもてなし」する気持ちに他なりません。
そんな気遣いにより、そのお店や施設の、お客様への「あなたに選ばれたくて、いつも心配りをしていますよ~」という姿勢が伝わり、好感を持たれる。好かれる。
その先にある「お店からのメッセージ」まで伝えられる。
つまり、店舗装飾やディスプレイは、お客様への“ラブレター”のようなものだと思います。
介護施設の季節の飾り付けは、入居者にリラックスして居心地よく、我が家のように楽しく過ごしてほしい、という施設職員の方たちの心の表れです。
それを見て、ご家族も「細やかな気遣い」に安心するし、そんな施設に大切な家族を預けたいと思う。
こんな気遣いのできる施設ならばきっと、栄養面も、衛生面も、安全面も、すべてにプロ意識と配慮が行き届いているはずだ、と信じられる。
そう思うと、頷ける気がします。
たかが飾り。されど飾り。
お店や施設・売り場の店舗装飾・ディスプレイは、そのショップ、レストラン・飲食店、美容室、ブティック、クリーニング店、病院、銀行、ゲームセンターなどのアミューズメント施設等々、すべての施設の“人格”を物語るということを、お客さまは無意識に、鋭敏に、感じ取っているのかも知れません。
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店舗装飾・ディスプレイ、飾り付けなど何にもしないけれど「おもてなし」は表現できる。
テレビの報道番組を見た数日後、ボクは職場近くにある、以前から気になっていた老舗喫茶店に入りました。
赤い屋根の小さな古い建物で、メニューを見ると喫茶のほかパスタやピラフ、定食メニューがあって、お昼時になるとサラリーマンで賑わい、午後は年配の常連客が集う、という「昭和」の香りを色濃く残す、昔ながらの喫茶店。
ずっと気になりつつ、ようやく初めて入ってみたのでした。
優しい笑顔が魅力的な、初老の夫婦が仲良く切り盛りしています。
初めて入ったボクにも、懐かしそうな笑顔で話しかけてくれます。
見回すと、店内には装飾らしい装飾もなく、別にインテリアにもこだわりは感じられません。
壁には手書きのメニューがべたべたと貼られ、テーブルクロスもカーテンも、オープン以来きっと20〜30年、新調されることもなく洗濯を繰り返されたであろう、色褪せた物ばかりでした。
かろうじて、壁の一角に古いクマのぬいぐるみが二つと、造花の入った花瓶がありましたが、それも、もう十年以上飾りっぱなしといった風情。
造花はガーベラ。
春と秋の二回開花するガーベラには、あまり季節感がありません(笑)
お店全体の「時が止まった」ような空気が漂っていました。
断っておきますが、これは決して批判しているわけではないんです。
このお店は、「昭和」のまま、時が止まったような、そんな雰囲気が心地良かったんです。
四季折々の花を日々活けてあれば、それはそれで素敵でしょう。
装飾物が置かれていれば、会話のきっかけになるかも知れません。
でもこのお店には、何もなくても日々話題が絶えないご主人の屈託のないおしゃべりと、人が好きでたまらないという気持ちがにじみ出るような、奥さんの笑顔がある。
それがこのお店の、最大の魅力だと感じます。
一人ひとりのお客さまに、丁寧に挨拶し、愛想良く話しかけ、メニューを丁寧に説明しながら、全員にしっかりと笑顔の印象を残す接客。
それが何よりのこの喫茶店の華なのです。
店舗装飾やディスプレイ、飾り付けなんて気にしなくても、毎日常連客が集まるお店。
それは、町の小さな喫茶店だから、そして、このご夫妻二人だけで毎日切り盛りしているからできることなのかも知れません。
ご主人と話したくて、奥さんの顔を見たくて、昔懐かしいケチャップナポリタンが食べたくて、香り高いコーヒーが飲みたくて常連さんは通う。
旬のおいしい食材と丁寧な仕込み、そして変わらぬメニューで、選ばれ続けるお店なんだなあと、すっかり色褪せた布製の黄色いガーベラ(もちろん、きちんと手入れされ、埃もかぶっていません)を眺めながら、ケチャップたっぷりのちょっと塩っぱいナポリタンを頬ばった、遅いランチタイムでした。
お店や施設の店舗装飾・ディスプレイ、飾り付けは、「お店の心」を伝える代弁者。
そう考えると、すてきな店舗装飾や気持ちの良いディスプレイとは、どんな状況でも、すべてのお客さまに等しく提供することのできる「おもてなし」である、と言うことができるかも知れません。
モノを販売する小売店に限らず、人が集う場所や施設、たとえば病院や銀行、レンタカーの受付窓口。
たとえばバーゲンセール中のショップ。
様々な状況の中、すべてのお客様に、いつも十二分の接客ができるとは限りません。
お待たせしているお客さまをほんの少し和ませてくれたり、慌ただしい中でも、精一杯お客さまに喜んでいただこうとするサービス提供側の想いを囁き伝えてくれたりする。
店舗装飾・ディスプレイ、飾り付けとは、派手さはないけれど、無口で優秀なスタッフのような存在なのだと、改めて思い直しました。
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